個人事業主は法人では使わない事業主貸や事業主借という勘定科目を使いますが、場合によってはこれらの期末残高が多額になる場合がありますが問題あるのでしょうか。

事業主貸が多くなる理由

現金売上が多額にあった場合

現金で回収した売掛金が多額にある場合に事業主貸が多くなることがあります。なお通常、現金で売掛金を受け取った場合は現金出納帳に記入されるので事業主貸が多くなることはありませんが、現金出納帳に記入せず事業主が直接ポケットマネーに入れた場合には事業主貸が多くなります。

個人名義の通帳に売上の入金があった場合

通常、個人事業主の売上は事業用の通帳に入金されますが誤ってプライベートの通帳に入金されることもあります。このような場合、仕訳を作成する際の借方は普通預金ではなく事業主貸になるので、この分事業主貸は増加します。

必要経費に算入できない支出が多い場合

所得税では経費に算入できる支出は限定されており、経費計上が認められない支出は家事上の損失として事業主貸に振替えられることになります。具体的には、国民健康保険料、所得税、生命保険料、住宅ローンの返済などが該当します。

通帳からの引出が多額にある場合

現金出納帳に記載されない預金通帳からの引出が多額にある場合には、仕訳では借方に事業主貸、貸方に普通預金となることから事業主貸が多額に計上されます。なお現金出納帳に記載されない通帳からの引出には事業主の生活費などがあります。

事業主借が多いと税務調査で問題になる?

会計ソフトに仕訳を入力したところ事業主借が多額になってしまし「こんなに事業主借が多くなっていいの?」と不安になる人がいるかと思います。特に現金や普通預金などの他の貸借対照表の科目と比べて多額になると心配になると思います。

結論的には事業主借が多額になっても税務調査で指摘されることはありません。

事業主借は事業主から借り入れをしたり経費の立替をしてもらった場合に計上されるものなので取引金額が多くなればその分計上されるので多くなるのは当然です。しかも事業主借は他の勘定科目と異なり減ることはないので金額が多額になるのは当たり前なのです。

売掛金の入金で事業主貸を使うのはやめよう

このように事業主借が多額になっても問題はありませんが事業主に限っては1点だけ注意事項があります。それは「売掛金の入金に事業主貸を使った場合」です。

売掛金の入金に事業主貸を使うということは事業用の預金通帳や現金出納帳に入金をせずプライベートの通帳などに入金したことを意味します。そうすると税務署として計上されていない売上があるのではと疑うようになるので余程の理由がない限りはきちんと事業用の預金口座に入金するようにしましょう。